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2025.12.15

当社独自のドラッグデリバリーシステム「Perfusio」 特許査定及び権利化手続完了のお知らせ

当社では、自社でmRNAを標的とする新たな医薬品の創出(パイプライン創出)に向けた取り組みを進めております。この取り組みのなかで、アンメットメディカルニーズが存在する希少疾患には、適切なモダリティである核酸医薬品で応えていきたいとの当社の成長戦略に基づき、また、当社の持つ技術が低分子創薬、核酸医薬創薬のどちらにも適用可能という長所を活かし、当社で最初となるパイプラインの候補として核酸医薬品の研究開発を進めております。

当社では、核酸医薬品を投与する際に必要となるドラッグデリバリーシステム*1(以下「DDS」と表記:製品名「Perfusio(パーフュージオ)」)を発案し、特許出願しておりましたが、このたび特許庁による査定が完了し、権利化の手続が終了いたしましたので、以下お知らせします。

・出願番号:特願2025―086160
・発明の名称:薬剤の局所的な投与方法
・特許出願人:株式会社Veritas In Silico
・特許査定日:令和7年10月21日

核酸医薬品は、一般的に大変高価であることなどからDDSを利用して、対象の疾患臓器へ正しく届けることが重要とされております。あらゆる核酸医薬品に適用可能で、さまざまな対象臓器に適時的確に投与でき、さらにその対象臓器以外に医薬品が到達しない、そうしたDDSが望まれていました。

今回特許を得たDDSには当社が発案した二重構造のバルーンカテーテルを使用します。このカテーテルは、バルーンを展開して血管を閉塞し、その閉塞の前後に通流可能なカテーテルを配置する構造となっております。(図1)(図1)二重バルーンカテーテルの断面構造の例

このカテーテルを治療対象臓器の静脈側と動脈側にそれぞれ配置し閉塞することにより、対象臓器がヒト体内に存在する状況で、体血流ではない流体を用いた臓器灌流*2を可能にします。灌流させる液体に医薬品を含ませれば、その医薬品はすべて治療対象である臓器のみに送られ、その後カテーテルを通じて回収されます。(図2)

(図2)二重バルーンカテーテルを使用する臓器灌流の概念図

このカテーテルの使用により、治療対象となる臓器に選択的かつ正確に薬剤を投与することが可能となります。そのため薬剤投与を必要最小量に抑えることも可能となります。当社が自社パイプラインで開発を進めている、シンプルな核酸医薬品とあわせて使用することにより、治療コストを抑えつつ、様々な臓器や疾患に新たな治療の選択肢を提供できる可能性があるものとして、今後は早期の実用化に取り組みます。

■当社代表取締役社長 中村 慎吾 コメント
このDDSは、核酸医薬品のデリバリー技術として意欲的かつ革新的なものと自負しております。これまで不可能とされてきた臓器に対するデリバリーをはじめ、腎臓の左右どちらか、肺の左右どちらか、究極的には肺の一部だけ等、非常に細やかなデリバリーの可能性につながるからです。この手法により核酸医薬品の投与時に最も懸念される肝毒性が出なくなることも期待できます。
また、デリバリーする医薬品は、核酸医薬品にとどまりません。低分子医薬品や抗体医薬品などもデリバリー可能です。この観点から、このDDSは、当局より認可が得られ次第、既に認可されている医薬品を使用する治療にもすぐに利用可能となります。
このDDSを用いることにより当社が手掛けている自社核酸医薬品パイプラインの研究開発期間を一段と短縮できる可能性があります。これにより一日でも早く、患者さまに新たな治療の選択肢をお届けできることを期待しております。
この技術を踏まえ自社創薬研究にもますます注力し「希望に満ちたあたたかい社会」の実現に貢献したいと考えております。

■今後の業績に与える影響
このDDSは、知財戦略を含めた計画のもと、2026年1月1日付で当社内に設置する「新規事業開発室」にて今後事業化を進めます。当社の2026年12月期以降の業績へ重要な影響を与える可能性については現在精査中です。
今後、開示すべき事項が生じた場合には、速やかにお知らせいたします。

【用語解説】
*1ドラッグデリバリーシステム:医薬品の有効成分を治療対象となる標的(主として臓器)に届けるためのシステムです。通常は医薬品に標的臓器に選択的に到達するような分子を化学的に付加したり、薬物を脂質の二重膜で包んだりする手法が使われます。しかし当社では、物理的に動脈側カテーテルで対象臓器にアプローチし、さらに静脈からもカテーテルでアプローチすることにより、物理的に医薬品を届けることをもってドラッグデリバリーシステムの一つとしています。
*2 臓器灌流:臓器灌流とは、特定の臓器に対して血液や薬剤、あるいは酸素や栄養素を含む液体を意図的に流し込むことです。