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2025.11.17

島根大学との肺移植後の機能不全を抑制する新たな医薬品の研究開発を目的とした共同研究開始のお知らせ

当社はこのたび、国立大学法人 島根大学(島根県松江市、学長:大谷 浩)とアンチセンス核酸(Antisense Oligonucleotides, ASO)を用いた、移植肺機能温存法及び、肺移植後早期のグラフト機能不全*1を抑制する新たな医薬品の開発を目的とした共同研究(以下「本件共同研究」と表記)を開始いたしましたので、以下お知らせします。

● 本件共同研究の目的、役割分担
原発性肺移植片機能不全(PGD)は、肺移植後の早期段階に発生するグラフト機能不全で、移植手術後に早期死亡に至る主な原因とされます。島根大学 医学部 山根教授は、PGDに関与する重要な因子を既に同定しており、本件共同研究ではPGDに関与する重要な因子の作用を抑制するASOを創製し、PGDを抑制する新たな医薬品の開発を目的とします。
本件共同研究では、まずVISが創薬プラットフォームibVIS*2を用いてASOの設計、新規分子に対するin vitro評価系*3の確立並びに、in vitro評価系におけるASO の効果確認を通じた最適化を分担します。島根大学はこれらと並行して、肺障害ラットモデルの作製を行い、肺障害ラットモデルにて最適化されたASOの有効性確認を分担します。

● 研究代表者
島根大学 医学部 外科学講座 呼吸器外科学 教授 山根 正修
Veritas In Silico 新潟研究所 主任研究員 髙田 遼平

● 本件共同研究の期間
2025年10月14日~2028年10月13日までの3年間

● 島根大学 医学部 外科学講座 呼吸器外科学 教授 山根 正修 コメント
このたび、わたし自身が発見したPGDに関わる重要な因子を標的として、PGDを抑制する新たな医薬品を提案できることを大変嬉しく思います。本件共同研究を通じて、新たな治療法を実現し、社会に還元できるよう取り組んでまいります。

● VIS執行役員 研究戦略部長 笹川 達也 コメント
このたび、島根大学様と共同で、当社がmRNA標的低分子創薬および核酸医薬創薬に適用可能な創薬プラットフォームibVISを用いて新たな医薬品の研究を実施できることに大きな期待を抱いております。
日本での肺移植例はあまり多くはありませんが、全世界的にみると大変多くの手術例がございます。この共同研究の結果が結実すれば、肺移植という大変な手術を乗り越えた患者さまが、より幸せな生活を送ることができるようになると信じ研究を行ってまいります。
また、本件共同研究は、当社の自社パイプライン創出に関わる重要なステップであると同時に、QbD*4を採り入れた真に実用的な核酸医薬品の実用化に向けた取り組みのひとつでもあります。
島根大学様と当社のメンバーが一体となり、患者さまの健康に寄与する医薬品を開発できるよう、邁進してまいります。

● 本件共同研究の実施にともなうVISの業績への影響
本件共同研究にともなう研究費用は、島根大学、VISそれぞれが自己負担し、金銭等の授受は行わない予定です。そのため、VISの2025年12月期以降の業績に与える影響は軽微と見込んでおります。
なお今後、開示すべき事項が生じた場合には、速やかにお知らせいたします。

(ご参考)用 語 解 説
*1 グラフト機能不全:「「グラフト」とは、移植手術で用いられる健康な組織や臓器(の一部)を指します。グラフト機能不全は、移植手術後、移植された臓器(グラフト)が本来の機能を十分に果たせなくなる状態を指します。
*2 創薬プラットフォームibVIS:mRNA標的創薬に必要となる全てのデジタル技術及び創薬技術を統合させたVIS独自の創薬プラットフォーム。VISのデジタル技術を活用したインシリコ*5によるmRNA構造解析により、任意に選択した mRNAから高速かつ高精度で複数のターゲット構造の探索が可能です。
*3 in vitro評価:生体由来の細胞や組織を用いて、培養器や試験管内などの人工的な環境で行う評価方法です。動物体内で行う試験(in vivo試験)の代替法として、動物愛護の観点や、短期間かつ低コストで特定の作用機序の解明や候補化合物のスクリーニングを行う際に用いられます。
*4 QbD:Quality by Designの略。製品設計段階から製造時の品質担保を考慮して、高品質の実現を確実にする手法です。
*5 インシリコ:「「コンューータを用いて」の意味。VISでは人工知能(AI)やスーパーコンューータ「富岳」なども駆使してゲノム(生物が持つ遺伝情報)をはじめ生体分子の構造などを数値化し、生理的な条件を踏まえた研究を行っています。

以 上