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2025.07.03

三菱ガス化学との核酸医薬の創出及び製造方法確立を目的とする共同研究契約締結のお知らせ

三菱ガス化学株式会社(本社:東京都千代田区、代表者:代表取締役社長 伊佐早 禎則、以下「MGC」と表記)と株式会社Veritas In Silico(本社:東京都品川区、代表者:代表取締役社長 中村 慎吾、以下「VIS」と表記)は、2023年12月よりRNAを標的とした核酸医薬に関する事業協力について協議と検討を重ね、2024年10月9日付リリース『三菱ガス化学とVeritas In Silico、RNAを標的とした医薬品開発の共同事業に関するMOU締結について』にてお知らせの通り、共同事業に関する MOU締結によりその確度を高めて参りました。このたび、両社はQbD1を踏まえた核酸医薬の創出及び、製造方法の確立を目的とする共同研究(以下「本件共同研究」と表記)の実施について合意し、共同研究契約の締結に至りましたので、お知らせいたします。

本件共同研究は、今後3年間を予定する研究期間内に、QbDに基づく長鎖RNA2標的に対する核酸医薬ASO3の創薬に取り組み、開発候補ASO化合物の取得と製造方法の確立を目指すもので、VISは自社独自の創薬プラットフォーム ibVIS®を活用して開発候補ASO化合物の取得を、またMGCは、開発候補ASO化合物の製造方法の確立を担います。なお本件共同研究により得られた成果物は、主にVISが権利を保有、MGCは一部を保有します。
本件共同研究においては、QbDの考え方を研究初期段階から採り入れます。創薬研究と並行してASOの製造方法・工程の開発を進めることにより、高活性・低毒性であるだけでなく商業製造の際に品質と信頼性、低コストを達成できるASOを創出し、また早期の製造方法の確立を目指して、迅速な臨床試験への進展を目指します。

MGCは、抗体医薬の領域においてGMP製造4の経験と知見を有しております。MGCは核酸医薬を今後最も成長が見込まれる医薬品市場ととらえ、CDMO事業5の可能性について検討を進めるなかで2017年にVISへ資本参加するとともに、2023年12月よりRNAを標的とした革新的な核酸医薬の創出・開発・製造を目指した事業協力について協議と検討を重ねておりました。

VIS は、現在、mRNA 標的向けに最適化した各種創薬技術からなる独自の創薬プラットフォーム ibVIS®を活用してmRNA を標的とする低分子医薬品の共同創薬研究を、複数の製薬会社と実施中です。この創薬プラットフォームは核酸医薬の創薬研究にも応用可能であることから、本件共同研究においても活用します。VIS は、これまでに実施した核酸医薬に関する自社研究の成果としてASOを既に同定したうえで特許取得しており、引き続き、さらに効率よく活性の高いASOを取得することを目的とした独自研究を継続しております。本件共同研究においてもこれらを活用して比較的短期間で研究成果物を獲得することを目指します。

MGCとVISは連携して本件共同研究を推進し、核酸医薬の事業化に取り組みます。

●VIS 代表取締役社長 中村 慎吾 コメント
当社を創業初期よりサポートいただいている三菱ガス化学様と、このたびの共同研究をスタートできることは大変光栄なことと受け止めております。三菱ガス化学の方々と当社メンバーがワンチームとなって本件共同研究を推進し、「希望に満ちたあたたかい社会」の実現に向けてまい進したいと考えております。
当社はこれまで、当社のプラットフォームibVIS®が、mRNAを標的とした低分子医薬品の創出だけではなく、核酸医薬の創出にも使えることを説明してまいりました。この応用性を活かす形で今回の事業化を進めることにより、当社は複数のモダリティを扱う「一味違ったバイオテク」を志向してまいります。本件共同研究によって得られた知見は今後、低分子医薬品の創出にも応用して、本件で取り組む核酸医薬の創出とあわせて、低分子医薬品の創出も一段と大きく展開していこうと思います。
製造業におけるQbDは、医薬品業界で規制当局が求めるQbDよりも広い考え方が採られます。これは、製品設計の初期段階より製造工程まで考慮に入れるもので、製品を創り出す者が設計段階から意識すべきこととされます。当社は、積極的に医薬品業界の一般的な基準を上回る水準で、この本来のQbDの考え方を採り入れます。これにより、品質面でも製造コスト面でも高い競争力のある医薬品の創出に挑戦してまいります。

●VISの今後の業績に与える影響等
今般の共同研究契約締結は、VISの成長戦略にてKPIに設定している「新規契約の締結」に該当するもので、2025年2月13日付『事業計画及び成長可能性に関する説明資料』でお知らせした“2025年度(2025年12月期)に締結する新規契約(目標4件)”の2件目達成となります。また本件共同研究によって生み出されるASOは、「自社パイプライン創出」の2本目(2026年度分)に相当するものとなる予定です。
この契約に基づき、VISは本件共同研究の期間中(3年間)、MGCより研究費を受領します。その総額は、2025年12月期の年間収入の20%程度を予定しております。
なおこの収益は、2025年2月13日付で公表した2025年12月期の業績予想に織り込まれており、その業績予想に変更は生じない見込です。
今後、開示すべき事項が生じた場合には、速やかにお知らせいたします。

以上

(ご参考)用 語 解 説
1 QbD:Quality by Designの略。製品設計時から製造した際に品質を担保できることを考慮に入れるという考え方。
2 長鎖RNA:おおよそ長さ300塩基以上のRNA分子のことで、タンパク質の合成やその他の細胞機能に重要な役割を果たす。mRNA、プレmRNA、ロングノンコーディングRNAなどの種類がある。
3 ASO:Antisense oligonucleotideの略。アンチセンスオリゴヌクレオチド。核酸医薬品の一種。一本鎖のDNAやRNAからなり、mRNAに結合して主にタンパク質の合成を制御する働きを持つ。
4 GMP製造:GMPはGood Manufacturing Practiceの略。医薬品や医薬部外品の製造において、原料の調達から製造、検査、出荷に至るまでの各プロセスにおける品質を保ち、安全で有効な製品を製造するための規範。
5 CDMO事業:CDMOはContract Development and Manufacturing Organizationの略。医薬品開発受託製造事業。